実現の日は近い!宇宙エレベーターの仕組みと課題

宇宙エレベーター


地球の環境を守りつつ、宇宙開発を躍進させると期待されている「宇宙エレベーター」。SFの世界ではお馴染みのこの施設も遠い夢物語ではなくなってきました。

世界中の大企業が開発に着手し、私たちが生きている間にも宇宙エレベーターは完成するといわれています。

今回は近い未来に私たちと宇宙を繋ぐ宇宙エレベーターをご紹介します。
 
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宇宙エレベーター

宇宙エレベーターとは

宇宙エレベーターとは、地上から宇宙空間まで伸びるエレベーター施設です。正式名称は「軌道エレベーター」といいます。

エレベーターといっても電車などの乗り物に近いイメージで、スペースシャトルのように大量の燃料を消費することも無ければ墜落の危険も無いため、安全で地球環境にも優しい宇宙への移動手段として注目されています。

以前は実現が難しいと考えられていましたが、カーボンナノチューブの開発以降は十分実現可能な施設になり、アメリカや日本などで既に開発プロジェクトが始まっています。

もう一つの宇宙プロジェクトである惑星移住計画と火星については関連記事にまとめています。

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宇宙エレベーターの仕組み

地球を周回する人工衛星は、地球へ落下する「重力」と宇宙空間へ飛び出す「遠心力」が釣り合っている高度を維持しながら飛行しています。その中でも地球の自転と同じ速度で飛行する人工衛星は、地上からはその一点に留まっているように見えます。

この一点に留まっているように見える軌道を「静止軌道」と呼び、宇宙エレベーターはこの軌道を利用して建設されます。

宇宙エレベーターの仕組み

image:jsea.jp

この静止軌道から地上までケーブルを下ろすとその重さの分だけ重力と遠心力バランスが崩れ、重力によって落下してしまいます。そこで宇宙空間側にも同じ長さのケーブルを伸ばします。

これによって衛星は重力と遠心力が釣り合い、静止軌道を周回し続けます。後はこれをケーブルが地上に達するまで繰り返します。

宇宙エレベーターの仕組み2
image:wikimedia

最終的には静止軌道から地上までの長さと同じ分だけ宇宙空間にもケーブルが伸ばされ、約10万㎞の非常に長い距離を繋ぐケーブルが出来上がります。このケーブルに昇降機を取り付けることで人や物を宇宙空間まで移動できる宇宙エレベーターが完成するのです。

仕組みは意外とシンプルなんですね。

 

宇宙エレベーターの課題

宇宙エレベーターにはいくつかの技術的課題が存在します。これをクリアしていくことでより安全で快適な設備を建設することができるのです。

ケーブルの素材

宇宙エレベーターを建設する際に最も大きな課題とされていたのはケーブルの素材でした。それまで地球最強の素材だったピアノ線やケブラー繊維を使用したとしても強度が足らないという結論に至ったからです。

重力と遠心力を利用するとはいえ超長距離でのケーブル輸送にはかなりの強度を持った素材が必要でした。しかし、カーボンナノチューブの発見により、宇宙エレベーターに必要な強度を保てることがわかったのです。

現在、宇宙エレベーターに適したケーブルの開発が、宇宙空間での材質変化も視野に入れながら進められています。
 

昇降機

その構造上、宇宙エレベーターのケーブルにはギア(歯車)を設けることができません。そのため昇降機はケーブルとの摩擦のみで地球の重力を超えて上昇しなければなりません。

また、機構が複雑になると重量や故障率が上がるため、いかにシンプルで軽い機構を開発できるかが課題になっています。しかし、これらの問題はこれまで最も難題だったケーブルの素材よりも遥かに実現可能な課題とされています。
 

運用エネルギー

超長距離に及ぶ宇宙空間への移動のためのエネルギーをどのように供給するかもひとつの課題になっています。現在のところエネルギー源は電気を使用する計画になっており、太陽光を使った発電やマイクロ波、遠赤外線レーザーなどを使用した送電案が出ています。
 

安全面

宇宙エレベーターはスペースデブリ(宇宙ゴミ)や人口衛星などとの衝突事故が予想され、バランスを崩したエレベーターが地上に落下する危険性が示唆されています。事故発生時の乗客の安全保障や、地上へ落下した際の安全面も視野に入れなければなりません。

宇宙エレベーターの課題
image:wikipedia

現在では軽量で薄いケーブルを使用することで空気抵抗が非常に大きくなり、落下した際の地上への影響がほとんどなくなるとされています。またレーダーで監視することで障害物を回収し、衝突を事前に防いでいく方向だそうです。

宇宙開発のリスクは宇宙をより良く知ることで回避していくことが可能です。あなたも驚く宇宙のトリビアについては関連記事にまとめています。

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宇宙エレベーターの費用

宇宙エレベーターの建築にはおよそ10兆円という莫大な費用がかかるといわれています。しかし、宇宙エレベーターは非常に費用対効果が高いため、これだけの費用がかかっても建築するメリットがあります。

宇宙エレベーターの費用

image:Space Elevator–Science Fiction or the Future of Mankind?

ロケットなどは約1億6000万円で打ちあげることができますが、輸送手段として考えると非常にコストパフォーマンスが悪く1㎏あたり約215万円もの費用がかかります。人間を運ぶと考えればひとりで1億4000万円もの費用がかかる計算です。

しかし、宇宙エレベーターでは1㎏あたり約2万円程度で済み、実に1/100の低コストでの輸送が可能になるのです。

 

宇宙エレベーター完成後の変化

1台の宇宙エレベーターが完成すれば宇宙への輸送コストが大幅に減少します。そのことから2台目の宇宙エレベーターは1台目のおよそ40%のコストで建設が可能になります。

3台、4台と数が増えるに従いコストは益々減少し、最終的には1㎏あたりの輸送コストは1000円程度まで落ちると考えられています。

宇宙エレベーター完成後の変化
image:Space Elevator–Science Fiction or the Future of Mankind?

この段階になると、これまで宇宙への輸送コスト問題で先延ばしにされてきた計画が次々に実行されていきます。太陽光発電衛星が充実することにより人類のエネルギー問題は解決されます。

宇宙旅行、宇宙ホテルなどの観光事業が発展し、無重力により新たな技術、産業が誕生していきます。宇宙ステーションの増設から月や火星への人類移住も進み、人口増加の問題も解決されるでしょう。

正に人類の「宇宙時代」が始まるのです。

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完成時期は2050年

宇宙エレベーターの完成はいつ頃を予定されているのでしょうか。日本の建設大手「大林組」は2050年に宇宙エレベーターの完成を目指すプロジェクトを発表しています。

宇宙エレベーターの完成時期
image:abc.net

また、JSEA(日本エレベーター協会)の計算によると、宇宙エレベーターは着手から25年で完成するとの発表もあり、2050年よりもかなり早く実現される可能性があるようです。
 

出典参考:wikipedia,jsea.jp

いかがでしたか?宇宙開発に強い日本でも「JSEA」や「大林組」などの企業がすでに宇宙エレベータープロジェクトを開始しています。私たちも生きている間に宇宙旅行が楽しめそうですね。

宇宙にはまだまだロマンが溢れています。