現在では限られた人間しか宇宙に行けないことから、世界中で憧れの対象になっている宇宙飛行士。子どもの頃に宇宙飛行士になることが夢だったという方も多いのではないでしょうか?しかし、宇宙飛行士になることは難しいというイメージだけでその夢をあきらめた方も多いと思います。事実、宇宙飛行士の詳細は自発的に情報収集しない限り普段の暮らしの中では知ることができません。
今回はそんな宇宙飛行士について、実際に宇宙飛行士になるための条件や訓練内容、あまり知られていない給料額などについてご紹介します。
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目次
宇宙飛行士
宇宙飛行士とは
宇宙飛行士とは、宇宙飛行機を用いて宇宙空間を飛行するための資格や能力を持ち、実際にその任に選ばれた人を指す言葉です。ロシアやアメリカでは宇宙飛行士になるための資格を設けていますが、世界共通としての定義は細かく決まっていません。宇宙飛行を行う組織団体から認められればその人は宇宙飛行士ということになります。
現在、NASA(アメリカ航空宇宙局)やJAXA(宇宙航空研究開発機構)のように大規模な機関は世界的にも少ないですが、民間企業の宇宙開発参入で宇宙飛行士人口は今後増えていくものと思われます。
宇宙飛行士になるには
なんとなくハードルが高く、エリート集団のイメージがある宇宙飛行士。そんな宇宙飛行士になるためにはどのような条件をクリアしなければならないのでしょうか?ここでは宇宙飛行士になるための条件をご紹介します。
宇宙飛行士になるための条件
宇宙飛行士には宇宙空間での行動に耐えうる強靭な肉体と精神力、仲間と連携するコミュニケーション能力、緊急時の冷静な判断力が求められます。そんな宇宙飛行士の適正とは具体的にどのようなものなのでしょうか?「国際宇宙ステーション搭乗宇宙飛行士募集」の募集要項によると宇宙飛行士には以下の資質が求められるそうです。
・自然科学系の大学卒業以上であること
・自然科学系の研究・開発の仕事に携わった経験が3年以上あること
・長期間の宇宙滞在に身体的・精神的に適応できること
・英語で充分コミュニケーションがはかれること(英検1級程度の英話力)
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「自然科学系」は、理工学部・工学部・歯学部・医学部・薬学部・農学部・衛生学部・栄養学部などを指します。システム運用に必要なエンジニアリング技術、又は実験に必要なサイエンス知識を身に付けておくことが必要で、実際に研究や開発の実務経験も求められます。メンバーと英語でコミュニケーションを取るため高い英会話力も必要なようですね。
虫歯があると宇宙飛行士になれない?
虫歯の治療をした歯があると宇宙に行ったときに気圧の差で治療痕が爆発するという話を聞いたことはないでしょうか?そのため虫歯がある人は宇宙飛行士になれないという都市伝説が存在します。本当に虫歯があると宇宙飛行士になれないのでしょうか?
JAXAによると虫歯があってもちゃんと治療さえしていれば宇宙飛行士になることに差しさわりはないそうです。しかし、爆発まではしないものの宇宙空間への移動により生じる気圧の差で治療痕が圧迫され痛むことはあるようです。そのため、打ち上げ前には歯科医師による検診をしているそうです。気圧の差にも気を配らなければならないとは、宇宙飛行士の仕事場所がいかに特殊かわかる例ですね。
宇宙飛行士の訓練
上記の条件をクリアし採用試験に合格したあと宇宙飛行士たちはどのような訓練を受けているのでしょうか?ここでは宇宙飛行士が体験する過酷な訓練をご紹介します。
①ロケット打ち上げ訓練
宇宙飛行士の訓練と聞いて真っ先に思い浮かぶのがこのロケット打ち上げ訓練だと思います。宇宙飛行士はロケット打ち上げの際に日常生活では体験したこともないような非常に高いG(負荷)を受けることになります。このGに耐える訓練をしておかなければロケット打ち上げ時に失神してしまいます。
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一般的な人間は6Gほどまでしか耐えられませんが、宇宙飛行士は9Gもの高重力に耐えられるように訓練されるといいます。肉体的にも精神的にも非常に過酷な訓練であることがわかりますね。
②大気圏再突入訓練
この訓練は不規則に回転する機械の中で大気圏に再突入する際のシミュレーションを行うものです。地球帰還の際には機体がコントロール不能に陥ることも多く、そういった状況の中でも正常な判断と操縦ができなければなりません。
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③無重力訓練
飛行機の急降下により無重力環境を作り出し、身体を慣れさせる訓練です。地上で暮らしていればあって当然の重力がないという状況は想像以上に身体へ負担がかかります。宇宙にいっても地上と同じように体を動かせるように無重力訓練は宇宙飛行士にとって必須の訓練になります。
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④VR仮想宇宙訓練
VRヘッドセットを利用して月面など仮想宇宙での行動をシミュレーションする訓練です。モーショングローブやボディセンサーを利用して地上にいながら宇宙空間を体験することができます。
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⑤宇宙食訓練
環境や保存の関係から宇宙に持っていける食事は限られています。現在では宇宙食の技術も向上していますが、それでも地上の食事と同じというわけにはいきません。宇宙ではほとんどの食事を乾燥食でまかなうため、地球にいる段階から宇宙食を食べ事前に体に慣れさせる必要があります。地上では楽しい食事も宇宙ではストレスになる可能性があるからです。
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サバイバル訓練
地球に帰還する際、必ずしも予定していた場所に着陸できるとは限りません。海に着水したり救出が困難な場所で救助を待たなければならない可能性もあるのです。
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その極限状態でも生き残れるように宇宙飛行士たちは過酷なサバイバル訓練を受けることになります。
出典:redbull
宇宙飛行士が遭遇する事故
宇宙飛行士の業務はその内容から非常に危険が多く、命に関わる事故に遭遇する可能性もあります。ここでは宇宙飛行士が直面する危険をその段階に分けてご紹介します。
①打ち上げ時の事故
ロケット打ち上げ経験者のうち約5%は打ち上げ時の爆発事故で死亡しています。1975年のソユーズ18a号や1986年のチャレンジャー号は打ち上げ直後に機体が異常をきたし爆発事故を起こしました。ソユーズ18a号は緊急脱出に成功しパイロットは生還しましたが、チャレンジャー号は宇宙飛行士7名が死亡しました。
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航空技術が向上し事故の発生率が下がったとしても0%になることは決してありません。厳しい訓練を耐え抜いたとしても実務に就く前に命を落としてしまう可能性が宇宙飛行士にはあるのです。
宇宙での事故
無事に打ち上げが成功しても安心はできません。宇宙ゴミや小隕石群との衝突や機体トラブルなどの事故が発生する可能性があるからです。1970年、月に向かっていたアポロ13号は酸素タンクが突然爆発しました。幸い宇宙飛行士たちの機転により乗組員全員が無事地球に帰還しています。地上では大事に至らないようなトラブルでも宇宙空間で起これば死に直結しかねません。
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地球帰還時の事故
宇宙でのミッションをクリアし、地球に帰る段階になっても宇宙飛行士たちには事故に遭う可能性が残っています。1967年、ソユーズ1号は地球帰還時にパラシュートが開かずそのまま地面に突撃しました。1971年のソユーズ11号では大気圏再突入の際に機内の酸素が全てなくなり宇宙飛行士たちは全員死亡しています。
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2003年にはアメリカのスペースシャトルコロンビア号が大気圏再突入時に空中分解を起こし生存した乗組員はいませんでした。彼らのミッションはまさに命懸けなのです。
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宇宙飛行士の給料
これだけ過酷で危険な業務をこなす宇宙飛行士ですからさぞかし高収入なのだろうと想像されると思いますが、実際はそんなことはないようです。宇宙飛行士の給料はその他の職員と同じ基準で計算されており、JAXAの場合では大卒30歳が月給30万円、35歳でも月給36万円となっています。賞与は年2回支給されることから年収は400万円前半~500万円前半だと予想されます。
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これは一般的なサラリーマンと比較しても決して高くはありません。厳しい訓練や命懸けの業務をこなしていることを考えれば低いとすら思えます。宇宙飛行士たちは個人が得られるお金ではなく、人類発展に関わるその仕事内容自体にやりがいを感じているのかも知れません。
いかがでしたか?宇宙飛行士たちの仕事は今後の人類の発展に大きく貢献するものです。彼らの命を懸けたミッションが私たちの未来をより良いものへと変えていくのでしょう。