SF作品でよく描かれる人体冷凍保存は、コールドスリープやクライオニクスとも呼ばれています。宇宙空間を旅するシーンや医療技術の進んだ未来で不治の病を治療するシーンなど映画やマンガなどでご存知の方も多いと思います。
人体の冷凍保存は現実でも行われており、その問題点や可能性などについて日々研究が進んでいます。
今回は人体冷凍保存について実際の方法や問題点、施術にかかる費用などをご紹介していきます。
合わせて読みたい関連記事
・こんな死に方したくない!予想される人類滅亡の原因
・人類が進化したらどうなるの?環境が創り出す未来の人間
・症状が怖すぎる!あなたの知らない生物兵器の真実
目次
人体の冷凍保存
人体冷凍保存とは
人体冷凍保存とは、難病や加齢によって死亡が確認された対象者の身体を、腐敗しない温度まで冷却し保存する技術です。現代では治療が不可能だった患者を未来の高度な医療技術によって蘇生、回復させることを目的としています。
空想上の技術ではなく実際に行われている手法です。人体の冷凍保存技術が完成されれば、古くからの人類の夢である不老不死技術が開発されるまで眠りにつくことも可能だとして、世界中から期待されています。
人体冷凍保存の方法
現在では生きている状態での人体の冷凍保存は許可されていないため、まず医師により死亡を確認することから始まります。無事、死亡が確認されれば冷却処理を開始します。
身体の腐敗が少しでも進まないように遺体を大量の氷水に付けながら人口呼吸器と血液循環器によって肺を収縮させ、血液を体中に循環させます。その後人体の機能を抑える抑制剤を血管からに注入し、麻酔薬も注射します。
さらに血液を循環させながら特殊な保存液と入れ替えていきます。
血液が完全に保存液と入れ替わった後は液体窒素により、生体変化が完全に停止するといわれる-196℃まで冷却します。冷却は一時間に0.5℃ずつ行われ、-196℃までになるのに一週間かかります。
保存液により細胞は凍らず、解凍された際に細胞が受けるダメージを最小限に抑えます。この状態は「ガラス化」と呼ばれています。
人体を乾燥させることで保存しようとするミイラについては関連記事にまとめています。
合わせて読みたい関連記事
閲覧注意!ミイラの作り方と存在の意味に迫る
人体冷凍保存の問題点
細胞が冷凍される際に細胞に含まれる水分は凍結することで膨張します。この膨張によって細胞膜が損傷し、ダメージを受けてしまいます。
現在の技術では血液を不凍液と入れ替えていますが、それでも体内の水分全てを不凍液に変換することはできないため細胞の破壊を防ぐことができません。
仮に生きた人間を凍結させ、この状態で解凍を行うと体中の細胞が破壊されているため蘇生できず、死亡してしまいます。現在でも精子や卵子の冷凍保存、解凍は可能ですが、それはタンパク質レベルの話で、脳や心臓など臓器に関しては実現できていません。
そのため、将来ナノレベルで破壊された細胞の修復ができるようになることが人体の冷凍保存技術を完成させるためには必要なのです。
この世には奇妙で不思議な都市伝説が存在しています。怖い都市伝説については関連記事にまとめています。
合わせて読みたい関連記事
怖い都市伝説!あなたを驚かせるかもしれない意外な噂9
冷凍保存の実験
生物の冷凍保存については様々な動物実験が行われています。しかし、解凍後の生存率は極めて低く、哺乳類に至っては一度も成功していません。
カエルや魚、昆虫などの実験では冷凍後24時間以内であれば、蘇生が確認された報告もありますが、これらの生物はもともと寒冷な地域に生息しているため、天然の不凍液成分を持っていました。
細胞を急激に冷却するのではなく、ゆっくりと冷却してから液体窒素で保存した場合の方が蘇生率が高いことがわかっており、この方法は「緩慢凍結法」と呼ばれています。この緩慢凍結法を用いて冷凍保存から蘇生した線虫が、凍結前に訓練した反応を解凍後も見せたことにより、冷凍蘇生後も記憶は残ることが証明されました。
冷凍保存から目覚めた人間の記憶や人格は施術前とどう変化するかは長い間謎とされてきましたが、この実験結果により人体の冷凍保存に対して期待がさらに高まりました。
人体冷凍保存の実例
これまで人間が冷凍保存された数は世界でおよそ300人ほどになります。しかし、現時点で蘇生の方法がないことを理由に一部の医師や科学者からは激しい批判や反対も起こっています。
しかし、そんな中であっても冷凍保存される人々は多く存在します。ここでは実際にあった冷凍保存の実例をご紹介します。
①ジェームス・ベッドフォード
ジェームス・ベッドフォードはカリフォルニア大学の心理学教授で1967年に亡くなりました。彼は人類初の冷凍保存者として、家族によって液体窒素で保存されました。
彼は15年ほど家族によって管理されていましたが、その後人体冷凍保存の民間団体「アルコー延命財団」に運ばれ現在も保存されています。
②キム・スオッジ
キム・スオッジは23歳のとき末期がんと診断されました。自分の余命が数か月だと知った彼女はインターネットの掲示板で冷凍保存技術の存在を知りそれに望みを託すことにします。
彼女は”ベントゥーリズム・ソサエティ”というボランティアグループの力を借り、無事資金を集めることができました。このグループは難病の冷凍保存希望者の資金収集を手伝うことで有名だそうです。
キムは現在将来のがん治療を待ちながら冷凍されています。
③ハル・フィニー
ハル・フィニーは、仮想通貨ビットコインの開発者のひとりとして世界中で知られています。彼は筋萎縮性側索硬化症という重篤な筋肉の萎縮を起こす難病により亡くなりました。
彼は自分の身体の保存を希望しており、液体窒素により冷凍保存されることになりました。
来世の可能性があるとしたならば、前世も本当に存在するのでしょうか?輪廻転生が信じられる前世については関連記事にまとめています。
合わせて読みたい関連記事
あなたの前世は何だった?輪廻転生の実例と退行催眠の方法
④テッド・ウィリアムズ
ボストン・レッドソックスに所属したテッド・ウィリアムズは亡くなった際に、将来蘇ることを望んだ息子のジョン・ヘンリによって冷凍保存が依頼されました。しかし、娘のボビー・ジョー・フェレルは父親が死後の散骨を望んでいたとして、遺体を取り戻すために裁判を起こします。
しかし、彼ら三人が死後冷凍保存され、将来蘇生して再会しようとサインした証拠が提出され裁判は兄ジョンの勝利となっています。ジョンも死後冷凍保存され、現在は父親と同じ施設で管理されています。
⑤マセリン・ナオバラトポン
マセリン・ナオバラトポンは脳腫瘍によりたった2歳でこの世を去ったタイの女の子です。彼女には計50回にも及ぶ高度な治療が施されましたが、彼女が助かることはありませんでした。
彼女の両親は人生を楽しむことができなかった愛娘を不憫に思い冷凍保存により未来の医療技術に望みを託しました。マセリンは世界最年少の人体冷凍保存者として眠っています。
⑥サンドバーグ夫婦
1994年、脳にできた腫瘍によって夫ヘルマーを亡くした妻のマルタは夫の希望をどおり彼を冷凍保存します。
マルタは自分も死後に冷凍保存されることを望んでおり、遠い未来で愛する夫との再会を夢みているそうです。
人体冷凍保存にかかる費用
自分の身体を冷凍保存しようと思ったら一体どれくらいの費用がかかるのでしょうか?世界にはいくつかの冷凍保存団体が存在しており、それぞれによってかかる費用は様々です。
また、脳から身体や意識を再生することに望みをかけ頭部のみを保存するプランもあるのだそうです。
ここでは主な対応団体の費用と連絡先をまとめています。ご自身の冷凍保存は自己責任で。
①アルコー延命財団
1972年にアメリカのカリフォルニア州に設立された人体冷凍保存の民間団体です。世界で一番有名な冷凍保存団体として知られています。
全身の保存は約2070万円で、頭部のみの場合は約830万円かかります。ペットの冷凍保存も受け入れてくれるそうです。
URL:alcor.org
②クライオニクス研究所
クライオニクス研究所は1976年に「クライオニクスの父」と呼ばれたロバート・エッチンガー博士によって設立されたアメリカの会社です。
クライオニクス研究所では全身の冷凍保存を約290万円で受け入れてくれます。
URL:cryonics.org
③Japan Cryonics Association
Japan Cryonics Associationは日本の有志によって運営されています。
彼らに依頼することでクライオニクス研究所を仲介してくれるそうです。
URL:cryonics.jp
出典:wikipedia
画像:theguardian.com
いかがでしたか?以前までは空想とされてきた人体の冷凍保存も研究が進み、それに望みをかける人々も増えてきました。今はまだ批判の声も多いですが、最後に笑うのは冷凍保存されている彼らかも知れません。