古代エジプトの若きファラオ「ツタンカーメン」。幼くして王の座につき、有名な黄金マスクと共に発見されたツタンカーメンとは一体どんな人物だったのでしょうか?
今回はツタンカーメンの人物像や彼の死因、噂されるツタンカーメンの呪いなどについてご紹介します。
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目次
ツタンカーメン
ツタンカーメンとは
ツタンカーメンは、紀元前1300年頃の古代エジプトを統治していたファラオです。ファラオとは古代エジプトの称号で、君主や王を意味しています。ツタンカーメンは現在知られているファラオの中でも最も有名な王の一人であり、後述する黄金マスクは世界中で知られています。彼は生まれつき足が不自由でつま先が変形していました。また、ホルモン異常のため男性でありながら胸や尻が女性のようだったと考えられています。こういった症状は先天性異常が多かった当時のエジプトでは決して珍しくありませんでした。
画像:opacity
ツタンカーメンはファラオであった父アメンホテプ4世の死後、わずか9歳(諸説あり)の若さでファラオに即位することになりました。彼は「太陽神アムン=ラー」を信仰し、即位後は自身をトゥトアンクアムン(アムンの生ける姿)と名乗るようにました。ツタンカーメンはアムン=ラーの信仰を復活させたり、首都を変更するなどの政策を行いました。
ツタンカーメンは18歳という若さで死亡しており、その後の政権は王族ではない大臣たちが引き継ぐことになりました。また、アムン=ラー信仰の復活や首都の変更などその若さに反して大幅な政策変更をしており、それらには多くの謎が残されています。このことからツタンカーメンの政策や死は歴史的なミステリーとされています。
出典:wikipedia
ツタンカーメンの死因
若くして命を落としたツタンカーメンの死因は一体何だったのでしょうか?王族による近親交配の傾向が強かった当時のエジプトでは遺伝による先天性異常が少なくありませんでした。ツタンカーメンもその一人でホルモン異常と足の変形の他にも背骨の変形や内臓の疾患があったことがわかっています。現在では大腿骨の骨折と脳性マラリアの合併症が直接の死因になったと考えられています。
病死が有力とされるツタンカーメンですが他殺だったのではないかという説も未だ消えていません。体調不良の原因は足の骨折で間違いありませんが、その原因が自身による転倒なのか他人に付き飛ばされたかがわからないからです。
ツタンカーメンの死後、王族ではない大臣や将軍たちが政権を握ることになったため、彼らの中の誰かが事故を装ったのではないかともいわれています。また、ツタンカーメンの妻アンケセナーメンは後にファラオとなったアイと結婚しているため彼女が犯人ではないかとする説さえあります。
画像:Ägyptischer Maler um 1350 v. Chr.
現在ではもうツタンカーメンの骨折の真実を確かめる術はありませんが、彼が大腿骨の骨折と感染症の合併症によって命を落としたことは間違いありません。若きファラオを襲った事故は果たして単なる不運だったのでしょうか?
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ツタンカーメンの墓
ツタンカーメンの墓はエジプトのテーベ(現ルクソール)に位置する「王家の谷」で発見されています。この墓はエジプトの王墓にしては珍しくほとんど何も盗まれていない状態で「黄金のマスク」を初めとする大量の埋葬品が発掘されました。この墓からは胎児のものと見られる2体のミイラも埋葬されており、DNA鑑定の結果からひとりはツタンカーメンの実の娘であることがわかっています。もうひとりは腐敗がひどかったため鑑定が不可能でしたが、同じくツタンカーメンの子どものものと考えられています。
ツタンカーメンの墓には「隠し部屋」が存在し、そこにはツタンカーメンの義母ネフェルティティが埋葬されていることがわかっています。彼女はツタンカーメンの死後にファラオに即位したアイの娘で、自分より先に死んだ娘の墓が荒らされること恐れたアイがツタンカーメンの墓を囮にするために用意した部屋ではないかと考えられています。このためツタンカーメンの墓は入口から見てネフェルティティの隠し部屋の手前に位置し、その間には何重もの壁が張られていました。死後に自身の妻を奪われ、さらには墓を囮にされるとはさすがにツタンカーメンが不憫に思えますね。ファラオの墓ピラミッドについては関連記事で詳しくまとめています。
関連記事:あなたの知らないピラミッド!作り方の謎や宇宙人との関係
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ツタンカーメンの黄金マスクの価値
ツタンカーメンの墓からは数多くの埋葬品が発掘されました。その中でも特に有名なのが「ツタンカーメンの黄金のマスク」です。このマスクは重さが約11kgもあり非常に純度の高い23金でできていることがわかりました。また、表面には銀を混ぜた21金で塗装されています。守り神とされるコブラや神の使者であるハゲワシの装飾がなされ、カーネリアンという赤水晶やラピスラズリがちりばめられています。考古学的な価値も高く価格にすると300兆円ほどにもなるそうです。
ツタンカーメンのミイラ
発見されたツタンカーメンのミイラは保存状態が良いとは言えない状態でした。また、発見後に包帯が外されてしまったことによりミイラに多くの外傷を与え、脊髄が損傷し性器は消失してしまいます。2005年にはCTスキャンによる調査が行われ、ツタンカーメンの年齢が19歳に及ばず体格も華奢だったことが判明しました。また、身長も165cmほどで当時のエジプトの平均身長程度だったことがわかっています。
画像:nxbkimdong
2010年にはDNA鑑定によりアメンホテプ4世のミイラが特定され、ツタンカーメンの実父であることが断定されました。また、アメンホテプ3世の王妃ティイとツタンカーメンの母のミイラの所在も判明し、ツタンカーメンの母が夫であるアメンホテプ4世の血のつながった兄妹(姉弟)であることがわかりました。古代エジプトの不思議な埋葬ピラミッドについては関連記事で詳しくまとめています。
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ツタンカーメン(ファラオ)の呪い
1920年代に王家の谷でツタンカーメンの墓を発掘した主導者のカーナヴォン卿や関係者が次々に急死したことから「ツタンカーメンの呪い」や「ファラオの呪い」が存在するといわれるようになりました。呪いの謎はあっという間に世界中に広がり、呪い以外にも墓地にガスが溜まっており、採掘の際に関係者がそれを吸ったため死亡したのではないかともいわれました。
シャーロック・ホームズの作者コナン・ドイルもツタンカーメンの呪いについて、「墓荒らしに対しての罠として、古代エジプト人が有毒なカビのようなものを設置していたのでは?」と語っています。しかし、現在では発掘から一年以内に急死したのはカーナヴォン卿ひとりであることがわかっており、彼の死因も熱病と肺炎が併発したことであることが判明していることからツタンカーメンの呪いは存在しなかったとされています。
いかがでしたか?未だ謎の多い若きファラオ「ツタンカーメン」。幼き王が見た古代エジプトの風景は一体どのようなものだったのでしょうか?