巨大な犬歯が特徴の太古の捕食者「サーベルタイガー」。自身より大型の獲物を仕留めるサーベルタイガーには意外な弱点や不思議な目撃談がありました。
今回はサーベルタイガーの生態やその弱点、生き残り説などをご紹介します。
合わせて読みたい関連記事
・太古の巨大鮫メガロドン!生存の可能性と目撃事例に迫る
・これ本当に存在したの?奇妙で不思議な絶滅動物
・信じられない!実在した古代の超巨大生物と奇妙ないきもの
目次
サーベルタイガー
①サーベルタイガーとは?
サーベルタイガーは今から約300万~10万年前の地球に生息していたネコ科の肉食獣の総称です。現生のトラに大きな犬歯を生やしたような姿をしていますが、実際はそれとは全く違う進化を遂げた生物になります。サーベルタイガーは恐竜よりもずっと新しい時代に生息していた生物ですが、その特徴的な姿から古生物ファンの中でも特に人気の高い絶滅動物です。
画像:Nidzo
②サーベルタイガーの名前の由来は?
サーベルタイガーの仲間は剣のように長い犬歯を持ち、トラのような姿をしていることからこの名前で呼ばれるようになりました。しかし、これらは総称であり、サーベルタイガーに分類される動物にはそれぞれ正式名称が存在しています。
画像:TamberElla
特に有名なのが後期のサーベルタイガーである「スミロドン」です。スミロドンは我々人類と同じ時代を生きていたこともあり、サーベルタイガーといえばこの種を指していることが多いです。ちなみにサーベルタイガーの和名は「剣歯虎(けんしこ)」と呼ばれています。
③サーベルタイガーの大きさは?
サーベルタイガーの大きさはスミロドンで体長2.1メートル、最大の剣歯虎であるマカイロドゥスで2.5メートルほどだったといわれています。肩までの高さもマカイロドゥスで1.2メートル程度とされているので、恐竜などと比べるとそこまで大きくなかったことがわかります。
画像:deskridge
しかし、小さい体に対して体重は270キログラムにまで成長しました。これは現生の大型のライオンほどの大きさです。
④サーベルタイガーの歯は弱かった?
サーベルタイガーの名前の由来にもなっている巨大な犬歯は、最大で25センチメートルのものが発見されています。この犬歯は大きいだけでなく、先に向かうにしたがって薄く鋭くなっていました。この形状は獲物に咬み付いた際の力の抵抗を軽減し、歯が折れることを防ぐ役割がありました。しかし、そのイメージに反してサーベルタイガーの犬歯の強度は決して高くなかったことがわかっています。
画像:deskridge
サーベルタイガーの歯は現生の犬や猫のように骨を咬み砕くことはできなかったといわれています。そのためこの犬歯は狩りの際に首元など硬い骨の少ない場所に突き刺し、血管を突き破ることで失血死させるのに使われました。また、先端が薄いナイフのような形状をしているため肉を切り裂くことに適していたようです。ちなみにスミロドンは犬歯が口外に剥き出しになっていましたが、サーベルタイガーの仲間の中には顎に歯が収まる窪みが存在する種もいたようです。
⑤サーベルタイガーは顎も弱かった?
意外なことに歯の強度が低いことが判明したサーベルタイガーですが、顎の力も決して強くなかったことがわかっています。スミロドンを始めとするサーベルタイガーの仲間はおよそ120度近くまで口を開くことが可能でした。その半面、顎と首の周りの筋肉が少なくなり咬み付く力は決して高くなかったのです。
画像:Biarmosuchus
このことからサーベルタイガーは咬み砕くのではなく、口を大きく開き獲物の急所となる太い血管に犬歯を突き刺すことでその命を奪っていたと考えられています。また、犬歯の有無が狩りの成否を大きく左右していたため、歯を破損してしまったサーベルタイガーはその後生きてはいけなかったといわれています。
⑥サーベルタイガーの体の特徴は?
サーベルタイガーの仲間は非常に発達した肩と前肢を持っていました。これは強靭な前肢で獲物を抑え込み、確実に急所に犬歯を突き立てるためでした。また、上半身の筋肉の発達により、非常に強い力で獲物の肌に歯を刺突することができました。
画像:deskridge
しかし、前肢に比べると後肢は短く貧弱であったため、サーベルタイガーはあまり速く走ることができなかったと考えられています。そのためサーベルタイガーはマンモスなどの動きの遅い大型の動物や怪我をした獲物を狙って狩りをしていたといわれています。
⑦サーベルタイガーは群れで狩りをしていた?
サーベルタイガーの化石の中には怪我をした後に治癒した形跡のあるものも発見されています。これは怪我をしていたあいだに仲間に餌を運んでもらって生き延びたことを示していました。このことからサーベルタイガーは単体ではなく複数の群れで狩りをしていたのではないかと考えられています。
画像:SharkeyTrike
あまり早く走ることのできなかったサーベルタイガーは、草むらなどに隠れて獲物を奇襲していました。複数のサーベルタイガーが犬歯を突き立てることにより、単独よりずっと早く対象を失血死させることができたのです。
⑧サーベルタイガーの絶滅理由は?
大型の獲物を狩るために独自の進化を遂げたサーベルタイガーでしたが、およそ10万年前を境に絶滅してしまうことになりました。サーベルタイガーの絶滅の原因は大型の生物の捕食に適応し過ぎたことだといわれています。機動力を捨て攻撃力に特化したサーベルタイガーたちは、後に出現した機動力と攻撃力を兼ね備えた新たな肉食獣たちとの生存競争に勝つことができなかったのです。
画像:TARGETE
サーベルタイガーが絶滅したころの地球は寒冷化が進んでおり、餌となる大型動物が減少していました。しかし、大型の動物を捕食するために進化したサーベルタイガーは、小型から中型の草食動物を捕らえることができなかったのです。このように環境に適応し進化した生物ほど、環境の変化に対応できないといわれています。また、サーベルタイガーは人類と同じ時代を生きていたため、毛皮を求めたヒトによる乱獲が絶滅の原因になったといわれることもあります。しかし、当時のヒトとサーベルタイガーの生息地域は重なっていなかったため、現在ではこの説は支持されていません。
⑨サーベルタイガーは生き残っているのか?
中央アフリカで目撃報告がある「ヴァッソコ」は大型のネコ科動物のような姿をしたUMA(未確認生物)です。大型のネコ科動物のような姿をしており、長い犬歯が生えていたという目撃情報からヴァッソコがサーベルタイガーの生き残りではないかといわれるようになりました。しかし、ヴァッソコが目撃される中央アフリカではスミロドンなどのサーベルタイガーの化石が発見されていないため、その可能性は低いのではないかといわれています。
画像:Raph04art
ところが、アフリカでは長く鋭い犬歯を持つネコ科動物に襲われたものとみられるカバの死体も発見されています。現地ではカバを捕殺できるような大型のネコ科動物はライオンの群れしか考えられないそうですが、不思議なことにこの死体には一頭分の攻撃痕しか残っていませんでした。また、死因は長い犬歯に血管を突き破られたことによる失血死だというのです。サーベルタイガーでないのなら一体どのような生物がこのカバを殺してしまったのでしょうか?
出典:wikipedia(剣歯虎),wikipedia(スミロドン)
画像:deskridge
いかがでしたか?大きな犬歯が特徴的な太古の捕食者サーベルタイガーをご紹介しました。サーベルタイガーの生き残り説は可能性が低いといわれていますが、生き残っているなら一目その姿を見てみたいものです。