ノアの方舟は嘘?実話?旧約聖書で語られる伝説の跡地と実在の可能性

ノアの方舟


太古の地球で起こった災害と神の啓示を受けたノアの伝説「ノアの方舟」。このノアの方舟伝説とは一体どのようなものなのでしょうか?
今回はノアの方舟の伝説とその可能性についてご紹介していきます。

 
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ノアの方舟

ノアの方舟とは

ノアの方舟とは、旧約聖書の「創世記」で語られる伝説のひとつです。神の啓示を受けたノアが大洪水から動物たちを救うために船を造ることから「ノアの方舟(箱舟)」と呼ばれています。

ノアの方舟とは
画像:Edward Hicks

ノアの方舟伝説はキリスト教の伝承の中でも特に有名なもののひとつであり、映画や小説の題材にも使われてます。キリスト教に縁がなくてもノアの方舟伝説は知っているという方は多いのではないでしょうか。

 

旧約聖書で語られるノアの方舟のあらすじ

旧約聖書「創世記」ではノアの方舟について以下のような伝説が語られています。

数を増やし堕落しきった人間たちを見た神は、大洪水によって彼らを滅亡させることに決めました。そして、一部の動物たちを救うために「正しい人間」の代表としてノアに方舟を造るようにお告げを出します。ノアは神からの命に従いゴフェルの木を使って三階建ての巨大な方舟を建設しました。

ノアの方舟の建設
画像:Schedelsche Weltchronik

ノアが全ての動物のつがいと自分の妻、息子たちとその妻を船に乗せると世界は大洪水に見舞われ、地上に生きていた生物たちを飲み込んでしまいます。雨は40日と40夜続き、150日のあいだ水が激しく流れ続けました。やがてノアの方舟はアララト山(現在のトルコ共和国に実在する山)の上に乗り上げます。

40日が経過した頃ノアは鴉(カラス)を外に放ちます。最初のうち鴉は降りる大地がないため方舟に戻ってきていましたが、7日後にはオリーブの実を加えて戻ってきました。さらに7日経つ頃には遂に戻って来なくなったため、ノアたちは水が引いたことを知ったのです。

ノアの方舟のあらすじ
画像:Gustave Doré

ノアは動物たちを方舟から地上に降ろし、その場所に祭壇を建てて神に供物を捧げました。これに対して神はノアたちを祝福し、子孫たちを滅亡させるような洪水は決して起こさないと約束し、空に虹を架けたのです。

 

ノアの方舟の大きさと形状の不思議

旧約聖書に伝わるノアの方舟の大きさは全長が133メートル、横幅が22メートルにもなる巨大なものです。また高さも13メートルを超えていたとされています。ノアの方舟の大きさは造船技術が未熟だった当時においては、正に「神の船」と呼べるほど巨大なものだったのです。

ノアの方舟の大きさ
画像:publicdomainpictures

さらにノアの方舟の大きさは現在の造船技術において「黄金比率」とも呼ばれる30:5:3であり、激しい高波に襲われても転覆しないとされる完璧なものでした。高い技術力と度重なる失敗によって生まれた現代の黄金比率が、なぜ数千年も前の伝説で語られているのでしょうか?

 

ノアの方舟に乗った動物の種類

ノアの方舟に乗ったとされている動物はおよそ8000種類であり、雄雌合わせると16000匹にもなります。しかし、研究者が計算したところノアの方舟はこれらの動物たちを乗せるのに丁度いい大きさであったことがわかっています。

ノアの方舟に乗った動物
画像:Charles Willson Peale

船の大きさや乗せた動物の数が完璧に計算されていることから、ノアの方舟伝説は実際に起こった出来事をモデルにしているのではないかといわれるようになったのです。

 

世界各地に残る同様の伝説

世界中を大洪水が襲ったという内容の伝説は旧約聖書の他にも複数存在します。ここではノアの方舟と同様のものとされる伝説をご紹介します。

なぜこのような伝説が世界各地で残されているのでしょうか?このような伝説のモデルとなる出来事が実際にあったということなのでしょうか?

①ギルガメシュ叙事詩

人類最古の文学作品とも呼ばれるメソポタミアの古書「ギルガメッシュ叙事詩」にもノアの方舟に酷似した記述が存在します。その内容は以下のようなものでした。

ウバルトゥトゥの子ウトナピシュティムよ、家を壊し船を造れ。物をあきらめて命を救え。全ての動物を船に運べ。こうして7日目に船は完成した。

やがて大洪水が起こるとウトナピシュティムは船に全ての動物と家族を乗せた。嵐は6日と7夜止むことはなく、洪水は大地を洗い流し人は粘土に変わった。

ギルガメシュ叙事詩
画像:GilgameshTablet

ウトナピシュティムは7日後に鳩を放ったが、止まるところがなく彼のもとへ帰ってきた。次に燕を放ったがやはりウトナピシュティムのもとへ戻ってきた。彼は最後にカラスを飛ばした。すると水が引いていたため今度は帰ってこなかった。

ウトナピシュティムは山の頂に酒を注ぎ、供物を用意した。

ギルガメシュ叙事詩で語らえるこれらの大洪水はノアの方舟伝説と非常によく似ていることがわかります。

 

②シュメール神話

メソポタミアの最古の都市文明シュメールの神話にも大洪水にまつわる伝説が語られています。

メソポタミアの神エンキは大洪水によって人類を滅亡させるというお告げをシュルッパクの王ジウスドラに下した。さらにエンキはジウスドラに難を逃れるための巨大な船を造るように命じる。7日に及ぶ大洪水の後、ジウスドラは最高神エンリルと空神アンに供物を捧げ永遠の命を授かったのだ。

シュメール神話
画像:Sumerian 26th c Adab

シュメール神話で語られる洪水伝説も特定の人物が巨大な船を造り、難を逃れるというものでした。そして最後には必ず神に供物を捧げているのです。

 

③アトラハシス叙事詩

紀元前1700年頃に作られたとみられる粘土板に刻まれた「アトラハシス叙事詩」にも大洪水に関する記述が残っていました。

人類は1200年に及ぶ繁栄によって人口が増えすぎ、安眠を妨げられた最高神エンリルの怒りに触れた。エンリルは最初、病気や飢餓などで人口を調節しようと試みたが、一向に減少しない人類に嫌気がさし、大洪水によってこれを一掃しようと考える。

アトラハシス叙事詩
画像:arscultures

しかし、滅亡する人類を哀れんだエンリルはアトラハシスにのみ生き残るための船の設計を命じた。そして今後同じようなことが起こらないように、不妊や流産という現象を創り出したのだ。

アトラハシス叙事詩でもやはり神々によって人類は海の藻屑に帰されてしまいました。

 

起こり得る大洪水の原因

不思議なことに世界中には大規模な洪水が起こったとみられる痕跡がいくつも見つかっています。ノアの体験した大洪水は実在したのでしょうか?

ここでは地球規模での発生が考えられる大洪水の原因ついてご紹介します。

①巨大雲による大雨説

北極や南極から冷凍されたマンモスや石炭などが発見されるため、太古の地球は全体が巨大な雲に覆われており、極地までもが緑溢れるジャングルだったのではないかとする研究者も存在します。そのため何らかの理由でこの巨大な雲が大量の雨となって地上に降り注ぎ、大洪水を引き起こしたのではないかという説が存在するのです。

巨大雲による大雨説
画像:pixabay

地球を覆いつくすほどの巨大な雲が雨となった場合、その量は陸地すべてを沈めてしまうほどであったと考えられています。マンモスなどの大型哺乳類はある時期を境に大量絶滅を起こしていますが、ノアが遭遇した大洪水も同じ頃であることがわかっています。

 

②彗星の水説

彗星の中には一定期間ごとに地球に接近するものが存在し、ノアの方舟伝説の時期にも地球に接近していた可能性があると考えられています。そのためこの彗星の表面にあった氷が太陽の熱で溶け、地球の引力によって地上に降り注ぐことで大洪水が発生したのではないかという説も存在します。

彗星の水説
画像:pixabay

これが事実であるとすれば地上はすべて押し流され、異常気象により激しい雨が降り注ぐことになったはずです。その光景はノアの方舟の伝説と一致していたでしょう。

 

③地軸の変化説

最新の研究により地球の地軸はこれまで幾度となく変化してきたことがわかっています。この地軸の変化が地球規模での大洪水を引き起こしたのではないかとする説も存在します。

地軸の変化説
画像:pixabay

彗星の接近や他の理由により地軸が変化した場合、その動きに合わせて海水も大きく移動することになります。この移動は大陸に大津波を起こすほど強力なものであり、多くの動物たちはその勢いに押し流されてしまったことでしょう。人類も例外ではなかったはずです。

 

大洪水の水はどこへ消えたのか?

大洪水が本当に起こっていたとして大量の水は一体どこへ消えてしまったのでしょうか?これらの水は決して消えて無くなってはおらず、現在も私たちのよく知る形で残されています。それが北極大陸と南極大陸を覆う氷塊です。

ノアの方舟の水
画像:pixabay

北極や南極はかつては石炭が形成されるほど緑が生い茂っており、氷は存在していませんでした。そのため現存する氷の量だけ昔は海水面が高かったはずなのです。

北極や南極の氷を水に換算すると大陸はすべて海の底に沈んでしまうといわれています。これはノアの方舟伝説で語られる大洪水が事実だったことを示唆しています。

 

事実か嘘か?次々に発見されるノアの方舟跡地

1965年にロンドンの新聞社DailyTelegraph(ディリーテレグラフ)が人工衛星がノアの方舟跡地を撮影したと報道しました。写真に写った船らしき物体の大きさは伝説に語られるノアの方舟のものと一致していました。しかし、調査の結果これらはただの岩石であることがわかっています。

また、1977年には考古学者のロナルド・ワイアットがアララト山の中腹で船のような形をした巨大な岩を発見しています。この岩にはロープを通すための穴が船と同じ位置に空けられており、ノアの方舟の化石ではないかと話題になりました。しかし、これも船の化石などではないことがわかっています。

ノアの方舟 人工衛星
画像:DigitalGlobe

1988年にはジョージ・ジャマルという男性がアララト山の氷の下から太古の木片を発見し、ノアの方舟の残骸であると発表しました。しかし、ジョージ・ジャマルは後に木片は偽物であったと証言しました。

2010年にはトルコと中国の考古学者団体がアララト山の標高4000メートル地点でノアの方舟の跡地を発見したと話題になりました。発見された木片の年代測定を行った結果、ノアの方舟伝説と一致するおよそ4800年前のものであることがわかっています。

ノアの方舟の跡地
画像:wyattmuseum

また、跡地の内部は複数の部屋に分かれており、動物たちを収納していた部屋ではないかと考えられました。現地では標高4000メートルの位置に家を建てる習慣がないため、発見チームは99%本物のノアの方舟であると語っています。

果たしてこれは本物のノアの方舟なのでしょうか?現在でもこれ以上の証拠は見つかっていません。

 

ノアの方舟伝説は実在したのか?

世界各地で大洪水の伝説が残っているため、過去に大規模な洪水が起こっていたのは間違いないと考えられています。しかし、地球規模の洪水が実際に起こっていたとするならば地上の生物はほぼ絶滅してしまったということになります。そのため5000年の短期間にノアによって助けられた動物たちだけで現在の生態系を築くことができたかについては疑問が残ります。

ノアの方舟 実在
画像:creativeartandframing

その一方で、ノアの方舟の大きさや比率は非常に理に適ったものであり、洪水も実際に起こったであろうことを考えると全否定することもできません。一部の地域を壊滅させるほどの大洪水が発生し、巨大な船で生き抜いた人物が実在したとしても何ら不思議ではないのです。

しかし、伝説が事実であったとするならば、彼はどうしてこの危機を知ることができたのでしょうか?彼に啓示をもたらした「神」とは一体何者だったのでしょう?

出典:wikipedia

 

いかがでしたか?大洪水と巨大な船の伝説、ノアの方舟についてご紹介しました。太古の地球で発生した災害の恐ろしさと伝説として語られる人物の謎にロマンを感じてしまいますね。