悪魔とは一体何者なのか?伝承される悪魔の種類と契約した狂気の人物

悪魔


世界各地で今も伝承され続ける邪悪な存在「悪魔」。この悪魔とは一体何者なのでしょうか?

今回は悪魔の種類とその正体、悪魔と契約したとされている狂気の人物などをご紹介します。

 
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悪魔

悪魔とは?

悪魔とは宗教などにおいて悪とされる霊的または超常現象的存在を指す言葉です。キリスト教や仏教などでは人類をたぶらかし悪の道に進ませる存在として悪魔の存在を説いています。

悪魔とは
画像:Michelangelo

海外でいう悪魔に近い存在として日本では昔から「鬼」や「天狗」という言葉を用いてきました。鬼や天狗は妖怪の一種とされていますが、魑魅魍魎のような下等な霊的存在ではなく、神に近い高位の霊物であると考えられています。

海外では高位の悪魔のことを「デビル(Devil)」と呼び、魑魅魍魎のように下等な悪霊は「デーモン(Demon)」と呼ばれています。しかし、日本ではこれらを特に区別はせず、共に「悪魔」と呼んでいます。

 

悪魔と天使の関係

キリスト教などの一部の宗教では、悪魔とは「堕落した天使」のことであると説いています。神の使いとして創造された天使ですが、その中には神の意志に背き堕落してしまった者もいたとされています。

悪魔と天使の関係
画像:Gustave Doré

彼らは「堕天使」となり、人間を堕落させる存在へと成り果てました。この堕天使が「悪魔」となり、すべての悪の根源であるとされるようになったのです。つまり意外なことに悪魔と天使はもともと同じ存在だったということです。

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有名な悪魔の種類

世界各地には数多くの悪魔の伝承が存在しています。それは魔王と呼ばれる非常に強力なものから悪霊程度のものまで実に様々です。

ここでは世界の有名な悪魔の種類についてご紹介します。

①サタン

サタンは多くの宗教に共通して登場する「悪魔の王」です。もともとはルシファーという美しく強力な天使でしたが、神に背いた彼は自ら進んで堕天使へと堕落します。

そして、双子の弟である天使ミカエルとの戦いに敗れたことで地獄に落とされ、悪魔へと姿を変えたといわれています。

サタン
画像:Gustave Doré

サタンは悪魔たちの長として地獄を支配しており、全ての悪魔の中で最も強力な力を持っているとされています。

数多くの映画や漫画などの創作作品においても適役として扱われていますが、最強の悪魔であるために「魅力的な悪の象徴」と認識されることも多いようです。

神話に登場する全知全能の神ゼウスについては関連記事にまとめています。

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②ベルゼブブ

ベルゼブブは旧約聖書の『列王記』や新約聖書の『マタイ福音書』などに登場する悪魔です。もともとは豊穣の神「バアル・ゼブル」として尊敬されていましたが、信仰には性的な儀式が必要とされていました。

しかし、この儀式を忌み嫌った古代ヘブライ人によってバアル・ゼブルは邪悪神として扱われるようになり、「ハエ(糞)の王」という意味のあるベルゼブブという名前で呼ばれるようになったのです。

ベルゼブブ
画像:Dictionnaire Infernal

悪魔になったベルゼブブは現在では「魔界の王子」であるとされており、サタンに次いで強力な悪魔であるといわれています。

また、ベルゼブブの頭には大きな二本の角が生えており、口からは高温の炎をまき散らし、腕力は悪魔の中でも最強であると伝承されています。

 

③ベリアル

ベリアルは死海文書に登場する強大な力を持つ悪魔です。その力は悪魔の王サタンにも匹敵するとされており、80以上の悪魔の軍団を率いているといわれています。

ベリアル
画像:Jacobus de Teramo’s

ベリアルはルシファーの次に神によって創造された天使であるとされており、非常に美しい姿をしているとも伝承されています。悪魔学においては召喚が可能な悪魔とされており、生贄を用意しないと召喚者に嘘を教えるといわれています。

 

④アザゼル

アザゼルは『旧約聖書』レビ記に登場する有名な悪魔です。「神が力を与える者」という意味の名前を持つこの悪魔は、本来は人類を見守る役目を与えられた天使でした。

しかし、人間の女性の美しさに目が眩み、仲間の天使たちと共に人間と交わってしまいます。

アザゼル
画像:Dictionnaire Infernal

これによって堕落したアザゼルは堕天使となり、悪魔と呼ばれるようになったのでした。アザゼルはしばしば山羊のような姿で描かれることがありますが、これはアザゼルへの生贄に山羊が必要だと考えられているためです。

 

⑤リヴァイアサン

リヴァイアサンは旧約聖書に登場する巨大な海の怪物です。映画や小説などにも登場するこのリヴァイアサンも悪魔の一種であるとされています。

旧約聖書のリヴァイアサンは巨大な体を持つ海の怪物であり、口からは炎を吐き散らし、泳ぐだけで波が渦巻くという恐ろしい存在として伝承されています。

リヴァイアサン
画像:Gustave Doré

体表は強固な鱗で覆われ、どのような兵器を持ってしても決してリヴァイアサンを殺すことはできないともいわれています。

悪魔学ではリヴァイアサンは水から誕生した悪魔だとされており、「嫉妬」を司る存在であると考えられています。また、サタンやベルゼブブに次ぐ強大な悪魔であるともいわれています。

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⑥ベヒモス

ベヒモスはリヴァイアサンと同じく旧約聖書に名前が上がる異形の怪物です。海のリヴァイアサンに対して陸に棲むベヒモスも強大な悪魔の一種であると考えられています。

イスラム神話の「バハムート」と同一視されるこの悪魔は、「神が想像した最高生物」として最強生物のリヴァイアサンと二頭一対を成しています。

ベヒモス
画像:William Blake

その姿は巨大なカバやゾウに似ているとされており、一日で千の山の植物を食べ尽くすといわれています。また、巨大すぎる背中には砂漠が広がり、どんな激流にも山のように動じないとされています。

悪魔学においては暴飲暴食を司る貪欲の神であると考えられていますが、旧約聖書では温厚な性格をしているとも伝えられています。

 

⑦アスモデウス

アスモデウスは旧約聖書外典に登場する悪魔の一種です。この悪魔は「色欲」を司り、女性に憑り付くことで夫となる男性を殺すと考えられています。

色欲の悪魔というと後述するサキュバスなどの「淫魔」のように妖艶で美しい容姿を想像してしまいますが、その姿は醜く恐ろしいものです。

アスモデウス
画像:Dictionnaire Infernal

アスタロスは人、牛、羊の3つの頭を持ち、鳥の足と毒蛇の尾がある異形の姿であるとされています。また、槍を武器としており、口からは炎を撒き散らすといわれています。

アスタロスは数ある魔界の王のひとりですが、敬意を持って接すれば人間に秘術を授けるとも考えられています。

 

⑧サキュバス・インキュバス

キリスト教の有名な悪魔のひとつがこのサキュバスとインキュバスです。この悪魔は「淫魔」や「夢魔」と呼ばれ、眠っている人間の夢の中に現れ淫らな行為によって人間とのあいだに悪魔の子どもを儲けるといわれています。

女性の姿をした淫魔はサキュバスと呼ばれ、男性の姿をしたものはインキュバスと呼ばれます。

サキュバス・インキュバス
画像:Walker, Charles

サキュバスとインキュバスは夢を見る人間の理想の異性の姿で現れるため、基本的には絶世の美女や美少年の姿をしているとされています。下半身は何も身に着けておらず、妖艶な魅力を持っているとされていますが、真の姿は大変醜く怪物のようなおぞましさだといわれています。

ルネサンス期には父親のわからない子どもを妊娠すると淫魔の仕業とされるのが一般的でした。しかし、実際には性に奔放だった当時の若者たちの言い訳に利用されていたようです。

 

⑨アスタロス

アスタロスはヨーロッパ各地に伝承される高位の悪魔です。40の軍団を率いる魔界の貴族であるとされており、サタンやベルゼブブに並ぶ魔界の支配者のひとりだといわれています。

アスタロスは巨大な竜や毒蛇を体に巻き付けた天使の姿をしており、口からは毒の息を吐き出すとされています。

アスタロス
画像:Dictionnaire Infernal

「過去と未来を見通す力」を持っており、悪魔学においては召喚に成功すれば様々な知恵を授けてくれる悪魔だと考えられています。悪魔学ではアスタロスやサタン、ベルゼブブなどの召喚を目指していますが、このような悪魔たちを召喚するにはそれ相応の生贄が必要であるとされています。

 

⑩ドラゴン

意外かも知れませんがドラゴンも悪魔の一種であると考えられています。様々な神話や伝承に登場する巨大な爬虫類の姿をしたドラゴンですが、新約聖書においてはその正体をサタンなどの悪魔であるとしています。

ドラゴンは「憤怒」を司り、世界中で邪悪の化身として扱われています。また、精霊としての側面もあるとされ、「大地の精霊」のひとつとも解釈されてます。

ドラゴン
画像:J. Allen St. John

ドラゴンが巨大な爬虫類の姿をしているのもキリスト教において蛇が悪魔の象徴だと考えられているためであり、世界各地で竜退治の伝承が存在することも悪に打ち勝つべきとする宗教観の表れではないかといわれています。

しかし、現代でのドラゴンは邪悪で悪魔的な面よりも巨大な怪獣として扱われることが主流になっており、映画やゲームに数多く登場することから最も人気のあるモンスターのひとつとなっています。

 

悪魔と契約したとされる人物

人類の歴史の中では悪魔と契約したと噂される人物が数多く存在します。彼らは悪魔との契約によって不思議な力を得たといわれています。

ここでは悪魔と契約したとされている有名な人物をご紹介します。

①ヨハン・ファウスト

ヨハン・ファウストは16世紀のドイツに実在した有名な占星術師、および錬金術師です。彼はゲーテの戯曲『ファウスト』のモデルとなった人物として世界的に知られています。

ファウストは占星術と錬金術の他にも医術や魔術にも精通していたとされており、やがて教会から悪魔と取引をしていると疑われるようになりました。

ヨハン・ファウスト
画像:Anonymous

彼は「剃刀を使わずに髭を剃る」など様々な奇術を使うことができたといわれていますが、教会からの迫害によりペテン師として扱われます。最期は錬金術の実験中に爆発に巻き込まれて死亡しますが、遺体がバラバラだったことから契約した悪魔によって命を奪われたと結論付けられました。

ファウストについては数多くの伝説が残っていますが、どこまでが真実なのかわからず現在でも謎の多い人物です。

 

②シルウェステル2世

シルウェステル2世は今からおよそ1000年前に活躍した数学者であり天文学者です。また、フランス人初のローマ教皇になった人物としても知られています。

シルウェステル2世には悪魔と契約したことで教皇になることができたという噂があり、後世では「魔術教皇」と呼ばれるようになりました。

シルウェステル2世
画像:Silvester

彼は悪魔を召喚し自分の運命を占ってもらっていたといわれており、悪魔に「エルサレムでミサを行なえばお前は死ぬ」と教えられたために、急遽サンタ・クローチェ・イン・ジェルサレンメ聖堂でミサを行うように変更したとされています。

しかし、その甲斐もなくシルウェステル2世はミサの途中で亡くなってしまいました。シルウェステル2世の最期の望みは自分の死体をバラバラにして街に撒くことだったといわれています。

 

③アントワーヌ・ローズ

「サヴォワの魔女」と呼ばれたアントワーヌ・ローズは1477年に自分が魔女であると自白した女性です。彼女は教会からの酷い拷問の末、自身がロビネという悪魔と契約したと話しました。

アントワーヌ・ローズ
画像:Martin Le France、Le champion des dames

アントワーヌは悪魔からもらった薬を棒切れに塗り、それに跨ることでロビネの力を行使できたと証言したそうです。この薬は覚せい剤のようなものであり、空を飛ぶような快感を得られたのではないかといわれています。

現在の魔女がホウキに乗って空を飛ぶというイメージは、このアントワーヌの証言が元になっています。

 

④ロバート・ジョンソン

ロバート・ジョンソンは1900年代初頭のアメリカで活躍した有名なミュージシャンです。彼の音楽は革新的であり、その後のロック界に大きな影響を残しました。

そんなロバート・ジョンソンも悪魔と契約した人物であるといわれています。

ロバート・ジョンソン
画像:pixabay

彼は神がかり的なギターのテクニックを持っており、悪魔に魂を引き渡すことにより、天才的な音楽センスを得ることができたと噂されたのです。事実、彼の楽曲には悪魔や地獄を連想させるものが多く、夜の墓場でロバート・ジョンソンがギターの練習をしているのを見たという人物まで現れました。

ロバート・ジョンソンは27歳の若さでこの世を去っていますがその死には謎が多く、悪魔によって命を奪われたのではないかという人も多かったそうです。

 

⑤テオフィルス

テオフィルスは六世紀に実在したローマの聖職者です。彼は悪魔と契約した伝承が残る最古の人物として知られています。

テオフィルスは教会から満場一致で司祭の推薦を受けましたが、謙虚さからこれを辞退し代わりに他の男が司祭の座に就きます。しかし、新しく司祭になった男はテオフィルスを不当に貶め、彼を失脚させてしまいます。

テオフィルス
画像:Michael Pacher

これを恨んだテオフィルスはそれまでのキリストの教えを捨て、サタンと契約することで司祭の座を奪い取ったといわれています。しかし、激しい後悔に苦しんだテオフィルスは70日にも及ぶ断食を実行し、自身の罪を償おうと試みます。

ところが断食完了の三日後、朝目を覚ますとテオフィルスの胸の上には彼のサイン入りの悪魔の契約書が置かれていたといいます。テオフィルスは死の直前にこの事実を次の司祭に告白し、自身が罪から解放されることを望んだといわれています。

 

⑥ジル・ド・レ

ジル・ド・レは聖少女ジャンヌ・ダルクと共に戦ったフランスの英雄です。救国のため勇敢にも命を捧げたジル・ド・レですが、ジャンヌと別れた後は錬金術や悪魔学に傾倒するようになります。

彼はジャンヌに救いを与えず無残に処刑させた神に背徳心を持ち、悪魔を召喚するために罪のない子どもを殺して生贄にしていました。

ジル・ド・レ
画像:Éloi Firmin Féron

最終的にジル・ド・レは悪魔召喚を理由に300人ものを子どもを殺害しています。彼は人体を解体することに快感を覚えており、召使たちは彼が昇天して眠っているうちに死体の処理をさせられたといわれています。

ジル・ド・レは悪魔を召喚しようとしていましたが、ジャンヌを失った悲しみが彼自身を狂気の悪魔に変えてしまったのです。

 

悪魔は実在するのか?その正体は?

悪魔とは一体何者なのでしょうか?また、人はこれまで何を悪魔と呼んできたのでしょうか?

ここでは悪魔と呼ばれたものの正体として有力とされている説をご紹介します。

①宗教上の適役

悪魔は宗教と非常に強く結びついており、伝承の多くも各宗教の教えの中に存在しています。宗教とはそもそも人民掌握の手段であったとする考え方もあるため、悪魔とは彼らにとって都合の悪いものに対する呼び名だった可能性があります。

宗教上の適役
画像:Ary Scheffer

例えばそれは教会の信仰に従わない者であったり、他国の異教徒たちでした。有名な「魔女狩り」では、教会にとって異端とされた人物を悪魔の使者だと考えました。また、多くの宗教では異教徒を悪魔だとして、酷く迫害した時代もありました。

教会の権力や威厳を保つために敵役とされた人々が悪魔の正体だったのかも知れません。

 

②理解できない現象に対する恐怖

科学の発達していない時代では解明されていない自然現象や災害を超常的な存在としてとらえることが一般的でした。それらは精霊や悪魔の仕業とされたのです。

理解できない現象に対する恐怖
画像:pixabay

また、医療技術が未熟だった時代では伝染病も呪いや悪魔の仕業だと信じられていました。このように未知の恐怖に対して付けられた名前が悪魔だったのかも知れません。

謎の怪奇現象ポルターガイストについては関連記事にまとめています。

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③当時の未確認生物や奇形の生物

悪魔には異形な姿をしているという伝承が多く残っています。そのため実際に昔の人々に目撃されていた「何か」が悪魔の正体だったのかも知れません。

そうだった場合、当時未確認だった生物を見て、驚いた人々がそれを恐ろしい悪魔だと考えたのかも知れません。

当時の未確認生物や奇形の生物
画像:pixabay

また、当時は奇形に対する正しい認識がなかったため、奇形で生まれてしまった人間や動物を悪魔の子とする風習さえありました。

人間という生きものは自身の理解を超えたものを悪しき存在であると思い込もうとする性質があるのです。

出典参考:wikipedia
画像:maxpixel

 

いかがでしたか?伝承される悪魔の種類と契約したとされる人々、その正体についてご紹介しました。昔の人々は何を信じ、何を悪魔と呼んだのでしょうか?地球にはまだまだ不思議が溢れています。