カンブリア紀の生態系の頂点アノマロカリス!不思議で奇妙な生態10

アノマロカリス


古生代カンブリア紀の生態系の頂点「アノマロカリス」。奇妙すぎる姿形をしたアノマロカリスは今では考えられない不思議な性質を持っていました。
今回はアノマロカリスの名前の由来や意外な生態、実は長かった生息期間などをご紹介します。

 
合わせて読みたい関連記事
閲覧注意?三葉虫の奇妙な生態と絶滅の理由
泳げなかったって本当?アンモナイトの謎と生態
デボン紀最強のダンクルオステウス!噛む力やサメとの関係とは?

 

アノマロカリス

①アノマロカリスとは?

アノマロカリスは今から約5億2千万~4億1千年前頃の地球に生息していた水棲の絶滅動物です。バージェス動物群と呼ばれる分類群に属する生物であり、現在の常識では考えられないとても奇妙な姿をしていました。

アノマロカリスとは
画像:invader-xan.pbworks

アノマロカリスはカンブリア紀の地球において最大の生物であり、生態系の頂点に君臨する最強の捕食者だったと考えられています。近年ではメディアで取り上げられる機会も増え、世界中に多くのファンを持つ古生物となりました。

 

②アノマロカリスの名前の由来は?

アノマロカリスの名前には「奇妙なエビ」という意味があります。これはアノマロカリスが発見された当初に触覚部分の化石しか見つかっておらず、研究者がこれを古代の奇妙な形をしたエビのような生物であると解釈したことに由来しています。その後、口や胴体の化石も発見されましたが当時の研究者はそれらを全く別の生物だと考えました。口の化石は太古のクラゲとして「ペユトイア」、胴体は原始的なナマコだとされ「ラガニア」という名前まで付けられます。

アノマロカリス 名前の由来
画像:mostlyopenocean

しかし、これらの化石に疑問を持つ研究者も存在しました。古代のエビであるとされていたアノマロカリスの化石には肢が生えておらず、クラゲの一種とされていたペユトイアの内側には歯のような突起物の痕跡があったからです。これらの疑問を受けて化石の再調査をおこなった結果、3つの生物に分けられていたそれぞれの化石は、同じひとつの生物だということが判明したのです。

 

③アノマロカリスの大きさは?

最初に発見されたアノマロカリスの大きさは1メートルほどもありました。この大きさは生物種のほとんどが小型だったカンブリア紀においては相当に巨大なものでした。

アノマロカリス 大きさ
画像:EloyManzanero

また、1995年に発見された「アノマロカリス・サロン」はそれまで見つかっていたアノマロカリスの中でも最大で、その全長はなんと2メートルを超えていました。アノマロカリスは圧倒的な巨体でカンブリア紀の生態系の頂点に君臨していたのです。

 

④アノマロカリスの特徴は?

アノマロカリスの体は横に平たい形状になっており、胴体部分には13対にもなるヒレのような部位を備えていました。尾に当たる部分にも3対のヒレがあり、これらを器用に動かすことで泳ぐための推進力を得ることができました。頭部には横に突き出した1対の大きな眼があり、下部には丸い円のような口が存在しました。触覚で捕まえた獲物をこの口に運び、逃がすことなく食していたと考えられています。

アノマロカリス 特徴
画像:RaimuGreen

このように復元されたアノマロカリスの姿は現在では考えられないとても奇妙なものでした。今とは全く古代の海に生息していたアノマロカリスは、現生生物にはない身体的特徴があったのです。

 

⑤アノマロカリスの生態は?

カンブリア紀の生態系の頂点に位置していたアノマロカリスは、当時の生物たちにとって脅威となる捕食者でした。アノマロカリスは多くのヒレを持つことによって当時の生物の中では高い遊泳能力を持っていました。大きな眼で獲物を見つけ出すと、触覚を器用に使って捕食することができました。カンブリア紀の地層から見つかる三葉虫の化石には何者かに噛みつかれたとみられる傷跡が残っていることがあり、これらはアノマロカリスによる攻撃痕であると考えられています。

アノマロカリス 生態
画像:Olorotitan

アノマロカリスの仲間の中には小型の種も存在しており、これらは触手に付着したプランクトンなどを食べる濾過摂食性(ろかせっしょくせい)の生物だったと考えられています。大小様々な種が存在したアノマロカリスは当時の海で特に繁栄に成功した生物のひとつといえるでしょう。

 

⑥アノマロカリスの眼は1万6千個?

アノマロカリスの眼は複眼になっており、ひとつの眼に1万6千個もの個眼があることがわかっています。複眼を持つ生物は現在でも存在しており、飛翔するために視力を発達させたトンボやハエなどがこれに当たります。アノマロカリスの複眼はトンボに迫る数であったことから非常に優れた視力を持っていたと考えられています。

アノマロカリス 眼
画像:Armel

 

⑦アノマロカリスの口は2つある?

化石の研究が進むうちにアノマロカリスの口は2つあったことがわかってきました。2つの口といってもそれらは別の場所にあるわけでなく、頭の下部にある口の中にもうひとつの口が存在していました。アノマロカリスの口は二重構造になっており、内部と外部が交互に開閉する仕組みになっていたのです。

アノマロカリス 口が2つ
画像:John Sibbick

そのためアノマロカリスに噛み付かれた獲物は咀嚼されながらも、必ずどちらかの口に捕らえられている状態になっていました。アノマロカリスの口は一度食らい付けば決して獲物を逃さない非常に恐ろしい構造になっていたのです。

 

⑧アノマロカリスの口の力は弱かった?

ところがアノマロカリスの持つこの恐ろしい口は、そのイメージに反して意外にも貧弱だったとする研究結果が出ています。アメリカの古生物学者ジェームズ・ハガドーン博士はコンピューターを使ってアノマロカリスの体の構造を調査しました。するとアノマロカリスの咬む力は現生の捕食者に比べると非常に弱かったことがわかったのです。

アノマロカリス 口が弱い
画像:samiximas

さらに数百にも及ぶアノマロカリスの化石が調査されましたが、硬い獲物を噛み砕いていたのなら当然あるはずの傷痕が見つかりませんでした。また、胃の内部や排泄物からも硬い殻を持った生物の痕跡は発見されていません。このことからアノマロカリスは脱皮直後の柔らかい三葉虫や硬い外殻を持たない生物を主食にしていた可能性が高いといわれています。しかし、巨大な体と二重構造の口を持つアノマロカリスは当時の海において強力な捕食であったことに間違いありません。

 

⑨アノマロカリスはデボン紀にも生き残っていた?

長きにわたってカンブリア紀より新しい地層から化石が発見されていなかったため、アノマロカリスはカンブリア紀にのみ生息していた生物であると考えられてきました。しかし、近年になってオルドビス紀やデボン紀の地層からアノマロカリスの化石が発見され始めたのです。これはアノマロカリスがカンブリア紀からデボン紀のあいだを生き抜いていたことを示していました。

アノマロカリス デボン紀 生き残り
画像:Fany001

デボン紀の地層から発見されたアノマロカリスは「シンダーハンネス」という名前の小型種で、体長は10センチメートルほどしかありませんでした。このシンダーハンネスの発見によりアノマロカリスはおよそ1億年にわたって繁栄した種であることがわかったのです。

 

⑩アノマロカリスの絶滅の原因は?

シンダーハンネスの発見によりアノマロカリスはデボン紀の前期まで生き残っていたことがわかりました。しかし、大型のアノマロカリスはオルドビス紀後期に起こった大量絶滅によって地球上から姿を消してしまったと考えられています。オルドビス紀の大量絶滅の原因は諸説ありますが、現在では地球の近くで発生した超新星爆発による「ガンマ線バースト」がその原因だといわれています。

アノマロカリス 絶滅の原因
画像:NocturnalSea

大型の恒星が寿命を迎える際には超大規模の爆発を引き起こし、その後ブラックホールが形成されます。その過程で生命に有害なガンマ線を大量に噴出する自然現象が起こることがわかっています。これがガンマ線バーストです。ガンマ線バーストはたった数秒しか地球に降り注ぎませんでしたが、その一瞬で全生物種の85%が絶滅してしまいました。大型のアノマロカリスもこのガンマ線バーストによって絶滅してしまったのです。

アノマロカリス 絶滅
画像:ultimateextinctanimalsencyclopedia

小型種であったため生き残ったシンダーハンネスですが、デボン紀後期にも急激な環境変化によって大量絶滅が起こります。デボン紀の大量絶滅の原因は深刻な寒冷化と海水面の後退による環境破壊でした。シンダーハンネスの化石はデボン紀以降の地層からは発見されていないため、仮に後期まで生き残っていたとしてもこの大量絶滅によって死滅してしまったと考えられます。1億年の長きにわたって地球上に存在したアノマロカリスですが、相次ぐ環境変化に対応することはできませんでした。

出典:wikipedia,wikipedia
画像:alex-bernardini

 

いかがでしたか?カンブリア紀の生態系の頂点アノマロカリスについてご紹介しました。メディアへの露出も増え復元図が多く公開されているアノマロカリスですが、本当にこのような奇妙な生物が地球上に存在したのかと考えるととても不思議に思えてきます。